有限会社平井結納店
おすすめポイント
結納とは、将来的な結婚つまりは婚約の成立を確約する意味で品物などを取り交わすことを指す。しかし、現在では金銭面や手間を省くため、結納が行われる機会が減ってきている。中には結納というもの自体を知らない人も少なくはないという。山科区北花山に店を構える平井結納店・三代目の平井喜久雄さんは、京都で唯一の水引工芸士。そんな平井さんに結納の現状と、今後のビジョンについて訊ねてみた。
インタビュー
商売としては厳しい。だけど……結納屋を始めたキッカケは、単純に父がこれ(結納屋)をやっていたから。あとは、モノづくりが好きだったということ。もともと僕は電気系が好きで。以前の仕事では電子計測器関係を販売していたし。簡単なもので言えば電卓。あとはオシロスコープとか、音の周波数や光の波長を測る装置とか。とにかく新しいものを作っていくことが好きだった。プラモデルとか。一次元のものを三次元に、平面のものを立体化するのはすごく楽しい。モノづくりを昔からやっていた分、結納の方にはすっと入りこめた。
会社を辞めて、父の仕事(結納)を継ぐことになったけど。どちらかと言えば、仕方なく継いだという感じ。魅力があまり感じられなかったし。なにより、地味。地味すぎる(笑)だけど、父の体調がどうみてもおかしいなというのもあったし。以前勤めていた会社の業績も悪くって。「まぁ、ええか」と思って結納を始めた。結納をやってよかったのかと言えば、商売として考えると非常に厳しい。けども、自分の一つの経験としては、いいんじゃないかな、と。やっぱり、お客様が喜んでくれると、やっていてよかったなと思う。たとえば、結納を「する、しない」で迷っている方にアドバイスをする機会がある。「最低でもこれくらいしたら」と強めに勧めることも多いんだけど、相手のお義父さんは喜んでくれる。「結納をやってものすごくよかったです」と、お礼の電話を頂けることもある。電話を掛けてくれるほど、喜んで貰えると思うと、あー、やってよかったな、と。相手への気持ちを形にする。どうして結納をしなくなったのかと言うと、相手に対する思いやりが減ってきているから。相手に何かしてあげると、相手が喜ぶ。そこには相手が必要とか、不必要とかは重要ではない。大事なのはこっちの気持ち。昔からのものをお渡しすることで、今後、相手の家といい関係を築いていきたい、という。子犬や子猫を貰ったとき、その犬や猫の親に対して餌を持って行き、飼い主の家にはお菓子を持って行く。それが人間にとっての結納。飾りはいらないからお金だけ頂戴という 女性がたまにいはるけど、それはちょっと違う。結納とは、それによっていい関係を保とうというアイテム。結納を渡したことで、離婚も減っていくんじゃないかな。相手に対する気持ちを形にしたわけやから。
仲人さんが消えた理由
来店されるお客様の多くは「どうしたらいいのか?」というところから始まる。たとえば「もし結納をしないのであれば、何をすればいいの?」とか。この場合、結納しないのであれば何もしない。一切お金も渡さない。お金を渡すだけは失礼にあたるのだということを教えるわけです。他にも、「相手から貰えるらしいけど、どうしたらいいの」とか、「お祝い持って行くにしても、どんな袋がいいの」とか。若者もお年寄りも関係なく、幅広い年齢層が来られる。お年寄りの場合、自分の子供や孫が結婚するからという状況が多い。昔は仲人さんがいたでしょう。仲人さんが全部済ましてしまうから、本人は見ていない。だから、お年寄りも聞きに来られる。もし、仲人という制度がいまでも残っていれば、すべてスムーズにできているでしょう。仲人さんが減った理由は、費用が掛かるから。仲人さんは、結納を相手へ届ける仕事をしてくれる。そのときに結納金の一割を、仲人さんへのお礼金として渡す。こんな感じで、お金の動きが出てくるから、余計な費用ということで、みんなやらなくなる。 そういうことがあるから仲人さんはなくなってきた、と僕は思うけどね。仲人ができないというより、どうしていいのか分からない。それなら、「いらんのちゃうか」と。
文化が消えていくこと=悲しいこと?
でも、文化消えていくのが悲しいかと訊かれれば、どうなんかな。仲人さんというのは、なくってもいいんじゃないのと思ったりもする。じゃあ、どうするのかといえば、僕らがその話をしてあげればいい。結納を買いに来られたお客様に、この場合はどうしたらいい、こうしたらいい、を本人に伝える。うん、そのほうが本人の為になる。今後、その本人が子供を産んで、その子が結婚するとき、「自分たちのときはこうしたな」と分かる。だけど、仲人さんがいたら全部ほったらかしになるでしょう。教えてくれる人がいないから、分からなくて当然。だから、その役割を僕が担っている。
娘には国家公務員を
結納の仕事はほとんど一人でこなしている。後継者はいてない。今後どうなるかわからん業界やし、いずれはなくなっていくものかな、と。やりたい人がいればいいけど、敢えて後継者を探そうとは思わない。娘にも国家公務員になれ、と(笑) 楽ではないやろうし、向こうは向こうなりの厳しさがある。けれど、結局安定するのはそこしかない。うん、娘には安定してほしい。結納をやるのであれば、趣味でやればいい。歳取ってからでも始められるもんやから。
若い子でも入りやすい店を目指して
とりあえず僕らの仕事は決まってしまっている。だから、今後新しことをすることはない。
大切なのは興味を持って頂くこと。だから、体験教室や講演会で、儀式関係についてお話しをする。お祝いのときにはこういう水引を使うとか。 色々な場所で話をしたい。積極的に。ただ、僕からガンガン喋ると売るための言葉になってしまう。それでも、ちゃんと意味合いは伝えるんだけど。例えば、 お見舞いのときは熨斗つけたらあかんよ。この「熨斗」の意味は伸ばすという意味やから、とか。知っている人からすれば「コイツ何考えてんねん」になるけど、知らなかったらそれが当たり前になる。コンビニで熨斗を買っても、コンビニの店員は意味合いまでは知らないかもしれない。分からへんときは、専門店に聞きに来いと。でもなかなか、二十歳ぐらいの子は来ない。だから、若い子でも入れる店っていうのが一番いい。入りやすくて、興味持ちやすくて、相談できる。若い世代が一番結婚を考えている世代でもあるし。大学生くらいが一番知ってくれればいいかな、と。
基本情報
- 病院・施設名
- 有限会社平井結納店 (小売・専門店)
- 小学校区
- 西野小学校 鏡山小学校 陵ヶ岡小学校
- 中学校区
- 花山中学校
- 住所
- 〒607-8481 京都府京都市山科区北花山中道町35-10
- URL
- WEBサイトへ