やましなさん

農園ボランティア 鹿島さん、小野さん

おすすめポイント

大宅保育園が所有する農園は果実や花で彩られ、いつでも四季を感じることができる。この農園は園児たちにとって、自然の尊さや食への関心を学ぶための貴重な場となっているそうだ。鹿島さんと小野さん(写真左が加島一弘さん、右が小田明仁さん)は1650㎡に及ぶ農園を管理している。

なんと二人は管理の仕事をボランティアで行っているのだという。竹藪の処理、無農薬へのこだわりなど、広い敷地内を管理するのは決して簡単な仕事ではないそうだ。それでも、「すべては子供たちのため」と二人は語る。

インタビュー

農園管理はボランティア

―お二人が農園管理を始められたキッカケは?

小田:もうかれこれ25年くらいになりますわ。当時、ぼくは社会保険事業(精神保険)に携わっていて、精神疾患の子とここによく来てたんですよ。その子たちを畑に連れて行こうっていうことになって、大宅家保育園の園長さんにも相談したんです。そしたら、農園の一画を貸して頂けることになって、それからですね。

加島:わたしはね、サラリーマン出身です。7年くらい前から園長と知り合いやって、会社を辞めて畑をやりたいんで農園を貸してくださいって言うたら、「いいですよ、好きなだけ」って言われたので。もともとは30坪程お借りしていたんです。まああのひと(小田さん)も同じ立場ですよね。で、それ以外のところは園の作物育てるために一人別の方を雇っていたんですね。その方が病気になって倒れはったんですよ。ところが作物というのは生きてますから。すぐだれかが手を出さないとおかしくなります。「じゃあ手伝いましょうか」ということで、ふたりで話し合って農園の管理をやりだしたのが始まりなんですけど。そこからずっと、続いてますね。

―当時から園児がたくさん来られてたんですか?

加島:そのころはね、年に6.7回イベントがあったのかな。それをこなすことから、我々ふたりは始めたわけですよ。いまでは、わたしたちも面白いからもっとこういうのしたらどうですか? こういうのしたらどうですか? と言いすぎて増えて。いまは年間12回、要するに月1回はイベントを開いています。

―農園の管理はボランティアだとお伺いしたのですが?

加島:そうです。

小田:結構忙しいですよ。広いから。竹藪なんかもあるしね。

加島:でも楽しいです。子どもたちは嘘つきませんしね。素直なんです。「今年のお芋は小さいね」「出来が悪いね」とか言われるんよ。子どもはストレートに反応するからね。だからあんまり手を抜けない。わたしの孫もだいたいおなじぐらいの年なんですよ。ちょうど1歳と3歳と5歳で。よく農園にも連れてきます。お芋掘りのイベントをやった後でも、(お芋が)残るんですよいっぱい。そうすると園長さんが「どうぞお孫さん遊ばしてください」って言ってくれるんで。だから自由にお芋を掘らせたり、走りの練習させたり。ちょうど1周100メートルあるんで、のびのびと。かわいいよね?

―子どもたちとのふれあいをどのように感じていらっしゃいますか?

小田:うーんそうね、やっぱりこどもって反応がおもしろいよねたとえばね、園内に農機具小屋があるんですよ。去年稲刈りをしたときにね、脱穀機を運びこんで脱穀作業してたんですよ。そしたら子どもがちょこちょことやってきてね、どうもあれを家だと間違えてるんですよ。それで「おっちゃんはあの家に住んでるんか?」って(笑)ほらいつ来てもここにいるでしょ。だから、おっちゃんたちここに住んでるのかとかいうてね。それからタケノコ掘りをしたときの話なんですけど。終わってから帰るときお礼言ってくれるんですけどね、並んでた子のひとりが列から離れて走ってきて、「おっちゃん、タケノコで食べてんのか?」って(笑)とにかく反応がストレートやしかわいいよね?

―かわいいです

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小田:でも、一年ちがうだけで全然ちがうな。2歳児から5歳児やったら全然ちがうな。

加島:それから大宅家保育園はたまたま児童館も経営されているんですよ。だから小学一年、二年生も来るんですよ。そうすると一年生になったらごろっと違うね。やっぱり悪い。なにより先生がずっとわめき散らしてる。「これはしてはいけません」「それもしてはいけません」って。もううるさいくらい。

小田:言うこときかへんから。

加島:うん。だからあんな可愛かった子たちがねえ。このへんから悪なっていくんやなってのがよく分かりますよ。もーう、入ったらあかんところ入り込んだりね、石投げたりね、人の分まで採りにいったりね、保育園の子いうのはそういうことせえへんのにねぇ。だから成長していくというか、悪なっていくというのが、よく分かるね。

園からは畑のおっちゃんって呼ばれているんですか?

 

加島:あ、そうですよ。不思議にね、おじいちゃんとは言わない。絶対分かっているはずなんですよ。でもおっちゃんと言います。あれ先生がちゃんと言いつけてるんかな?

小田:先生ちゃうか?

加島:ふたりとも『畑のおっちゃん』ですよ。でも覚えているみたいですね。先生たちに作物をあげるとき、園に行くとたまたま昼休みの時間に立ち会うことがあるんです。すると、「いま園児たちが給食たべてますから一緒にどうですか?」と誘われてね。一緒に食べることがあるんですよ。そしたら、いつもと違う場所で会ってるんですよ?そやけど分かってるみたいですよ。「畑のおっちゃんや!」って。「おっちゃん今日何しにきたん?」とか言ってくれて。

―覚えてくれているのは嬉しいですね。農園の作物は給食でも使われているんですか?

加島:いえ、基本的には使わないみたいですね。業者さんが入っているからね。でもトマトとか。

小田:うん、そんなんはなぁ。使われるみたい。

加島:トマト狩りもあるんですよ。そうすると面白いことに、そのときをキッカケにしてトマトを食べられるようになった子が何人かいるみたいです。農園で食べるんですよ。そうすると他の子が食べているのに食べないわけにはいかんのやろうね。口にいれたまま10分くらいじーっとしている。でも、結局最後には食べるから。だからこれを機会に好き嫌いがなくなりましたって親が喜んだりしてくれる。

―いやそれはすごくいいことですね!

加島:ですよね。そりゃもう自分たちでいうのもおかしいけど味はまったくの別物ですよ。スーパーで売ってるトマトなんか食べる気がしないのでね。子どもにもその差があるのかもしれないけど。逆にいいような悪いようなところもありますよね。

―逆に、園児とふれあっていて困ることや悩み事はありますか?

加島:それはまずないですね。

小田:園児は来ても、1時間いいひんから。

加島:そうやね。だいたい短時間ですね。 ただだいたい一学年ずつ来るんですよ。だからひとつのイベント、たとえばトマト狩りやったら4回とかね。回数は多くても、一回の時間は短いですよね。 あんまり長いと子どもも飽きるしねえ。

―子供たちもすごく楽しみにしてるんでしょうね。「今月はトマト、来月はタケノコや」とか。

加島:そうそう。園児たちは必ず僕らの前に整列してね、お礼言って帰るんですよ。そのときわたしらは予告編をやるんですよ。次はおいも掘りやるからね、次は柿やからね、とか。ただなかなかね。それ言うてもどれが柿なのか分からないみたいやね(笑)柿の木って何本あったっけ? 17?

小田:19。

加島:19本か。結構多いですよ。そのへんのところをちょっとデータ言いましょうか?だいたいね、農園全体が1500坪くらいですよ。そのうち果樹園が500坪くらいかな。あとは畑です。で、だいたい一年間に植える作物の種類が25種類~30種類。とにかく子どもたちの数と先生の数を合わすと400人いますからね。ひとつの作物の単位が大きいんです。基本的には1000株~1200株くらい植えるんです。だいたい植える時期は春植えて夏に採る、秋に植えて冬に採る。大きくわけるとその二回ですね。

―作物を、どんな思いで植えているんですか?

小田:長年やってるさかいね、あんまり(笑)

鹿島:二人は一緒にやってるんですけどね、得手不得手というか好き嫌いはありまして。小野さんは耕したり種を植えたりそういうのが好きなんです。で、わたしは水やったり雑草抜いたりね、収穫するのが好きなんですよ。どっちかいうとね。だから前半型と後半型に分かれているわけです。小野さんはあんまりね、収穫は関心ないですよ。

小田:できるもんやと思ってるからね。

加島:伸びて成長していくまでが楽しいみたいやね。

小田:子どもたちがよろんでとってくれたらそれでいい。

加島:けっこう子ども厳しいこというもんね。ぼくらに言うわけじゃないけど、「今年のちっちゃいな」とか、友達同士で言うのが聞こえてね。もうぐさーっと。でね、今年は、出来が良かったんですよ。だから子どもたちが来た時に「今年は大きいよ!」って。「ほんまかぁ?」って言われましたけどね。

―これからもずっと農園を続けていきたいって思われますか?

加島:続けたいですけどね。

小田:もう歳やね。

加島:うん、体力が結構いるんですよ。いろいろ工夫してね、作業量は減るように、工夫したんですよ。それでやっとこさですね。

小田:家庭菜園やったらね、こんなところまで体力もなにもいらないだろうし。

加島:肥料をやってるから。作物もそうですけどそれ以上に雑草がすごいんですよ。これを退治するのは大変で。普通のお百姓は雑草を殺す薬を撒いたりするんですよ。枯れたらそのまま土の中に入れちゃって、そのまま次の作物育てたりするんです。あとは全部機械でやりますからしんどくないしね。でも、ぼくらは全部で手でぬきますからね。

―無農薬なんですね。すべては子供たちのため?

加島:そうですそうです。やれるのなら、いつまでもやりたいんですけど……。もう数年かなぁと思ってます。まあ小野さんはぼくより5.6歳若いからもうちょっとやれると思うんですけど。

―もし、農園を辞めるとなったとき、次なにかやりたいことがあるんですか?

加島:さっきちょうど二人でその話をしてたんです。これやめたらなにしようかなと思ってね。個人的な話になりますけど、私の一日というのは、三人の孫を朝、保育園に連れて行って帰ってくるので、二時間。ちょっと遠いとこに住んでますので、時間がかかるんです。それから農園管理に4時間。夕方、疏水沿いをウォーキングで1時間。で、合計7時間。それ以外はテレビ見たり、本読んだり。もし農園の仕事がなくなれば4時間も抜けるわけですよ。そうなったら、どうしようかと思って。また新たに没頭できるもんを見つけんと。

―自分のやりたいことを探すって、素敵ですね。

加島:男性と女性を比べたら、男性の方が社交的だとずっと思ってたんですが。仕事を辞めてからは、まったく逆転しますね。女の人は上手に友達作って楽しんでいますわ。勤めを辞めた男の人は、結構さみしい生活を送っていく方が多いと思います。たまに雨が続いて、2、3日テレビばっかり見てると、体調崩すんですよ。

小田:うん、絶対おかしくなる 。

加島:頭が痛くなったり、おなかを下したり。毎日雨やったらどうしよう、と思って。それこそ梅雨の時期はウォーキングもできない。だから私は駅前にあるフィットネスに行ってるんです。元気というより、自己防衛。それをしとかんと調子悪なるから。小野さんはどうしてんの? ぼくより労働時間ながいでしょ 。

小田:ちょと長いな。いまは八時過ぎくらいから、仕事を始めて。昨日も二時まで。ご飯も食べずに。 やってたら昼ご飯を忘れる。それぐらい農園管理は面白い。

更新日:2020年11月4日
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